2018-09-22 講演会「発達障害のある人の就労とその継続のために必要な力とは」について

2018年9月22日13時から、高井戸区民センターにおいて、「発達障害のある人の就労とその継続のために必要な力とは」という内容で、講演が行われました。以下はその内容です。

障害者雇用について、雇う立場から

清水 直輝さん (ソランピュア株式会社事業推進部長)


就労するためには、雇用される人が、「しなやかに」、「したたかに」適応していくことが重要。会社は利益を出さなければならないため、 会社の理念や方針に従っていく必要がある。しかし、それだけではなく、自分にとって重要な希望(たとえば給与)をしっかり持つといった、自分を曲げない「したたかさ」も必要である。就労すると身の回りの日常が「がらり」と変わる。集団に属することになるため、会社のルールに縛られる。また、人間関係(家庭や学校ではない関係)も変わる。

a) 就労のために

就職直前から採用時においては、自分の状況や特徴をよく知ることわかることが大事。第三者(家族・支援者・活動グループ)の意見を参考にするとよい。また、出来ないことを把握するのも大事。つまり、自分を理解していることが就労のキーワードである。
会社の要求と自分の要求の調和を考える事が必要。自分にその会社が合っているか、生活に安定感はあるか(睡眠、食事、余暇など)も重要。問題が起こる原因になる。

b) 就労後の定着期において

  1. 働き続ける体作り
    勤怠の安定(身体的):生活リズムの安定、医療機関や服薬の継続性
    働く意欲の継続(精神的):企業での存在意義を感じているかなど。
  2. 環境変化へのレジリエンス強化 (レジリエンス=耐性)
    会社での仕事は、必ず環境の変化(仕事内容 所属が変わる事や、上司同僚の異動や部下ができる他)がある。これを乗り越えるために、レジリエンスを高める行動が必要 悩みを溜めない そのための工夫が重要。

c) 本人を取り巻く「人」の問題

家族関係→強固になりすぎると本人にとっての障害となる。【例】お父さんの言うことだけ聞く
家族が見ていない世界にさらすことで力を付けていく→企業に入るときに有効にはたらく
第三者=支援者を使いこなしていくとよい。最大の支援者=ピア発達障害(当事者同士で)

杉並区における障害者雇用支援について

茂木 幹雄さん(杉並区障害者雇用支援センター センター長)


就労支援のサービスについて

  1. 障害者就労支援センター
    どなたでも利用でき無料。障害のある方の就労相談全般に対応。これから就労したい方職場定着支援希望の方が多い。
  2. 就労移行支援事業
    障害者総合支援法に基づく事業で、就労を目指す方が福祉サービスの支給決定を受けることにより利用可能となる。原則2年。
  3. 杉並区就労支援センター
    杉並区独自のサービス。区からの委託。障害の有無を問わず就労相談やセミナーの実施をしている。30代くらいまでが対象。

なお、ワークサポート杉並は、上記1)、2)の両方の事業を担っている。「杉並区障害者雇用支援センター」は2)の呼称。

コミュニテイ心理学に基づいた発達障害者への心理社会的アプローチ

中村 干城さん(杉並区発達障害支援チーフコーディネーター / 式場隆三記念クリニック)


杉並区では成人期発達障害者支援事業として、
1) 健康支援プログラム(保健センター担当) 2) 心理教育プログラム(保健予防課担当) 3) 職業準備プログラム(障害者生活支援課担当) 4) 余暇支援プログラム(障害者施策課)を用意している。
社会的コミュニケーションについて コミュケーションの障害:大人の場合は語用論 語用論=文脈を踏まえて言葉を運用する能力【例】〇彼は仕事でミスするけど優しい。△彼は優しいけど仕事でミスする。どちらが適切か?
就労に向かって取り組む事は、話し合いの場にのれる練習をすると、支援がうけやすい。また、障害の内容を把握しておく事が重要。生活障害があっても具体的な内容が違う。【例】時間にルーズ:こだわりが強いVS時間の概念が弱い

質疑応答

  • Q:自分を知ると言うことは自閉スペクトラム症の人は難しい。(清水部長へ)
    A:困難であることを共有することが大事。第三者からの意見をいかに取り入れていくか、それを言語化していくことが自己を知ることになるのではないか。第三者や自分の言いたいことを書いていくようなことをやっていくとよい。
  • Q:話し合いの場に入れるスキルが大事と言うことだが、家庭で語用論を高めるためのヒントはあるか?(中村コーディネーターへ)
    A:一旦外に出してみる事は大事、支援者に客観的に特性を見てもらうのがよいのでは。家族が気づいていないということに気がつく事が大事。対処療法を求める事が多いが、原因を探る 対策する方が大事。